写真作品

わたらせ渓谷鐵道 12系客車

トロッコわたらせ渓谷号
まだ今みたいにヒコーキだの新幹線だのと瞬発力を持てなかった頃、どこに行くにもフリーきっぷ一枚を片手にえっちらおっちらと何時間も閉じ込められ、かと言って外を見たところで、別に人々がワァキレイ!とか言うわけでもない景色が流れていく時間をひたすら過ごしていた。
ときどき腰がキツくなってきて姿勢をちょっとずつ変えるんだけど、そのちょっとずつ変わる姿勢も何周かローテーションしてて飽きてくる、誤解を恐れずに言えば退屈な時間である。

退屈ならば乗らなきゃいいじゃないかと思う人もいるだろう。それはそう。しかし人間の思い出補正というのは実にワガママなもので、その退屈さと久しぶりに再会したくなったのである。
別に何かをするわけではないし、退屈だけど別に他の人に話しかけてほしいわけでなく、自分の時間に入り込んでボーッとして、座席背もたれの端と壁に寄りかかってウトウトしたりするぐらい。それっぽい理由など存在するわけもなく、ただなんとなくでしかない。

12系は自分が物心ついたときには既に定期運用は無かったけど、115系や413系の同じ感じの座席や窓にもたれかかり野暮ったい普通列車の雰囲気を経験してきたクチであるのでそれなりに記憶や思い出も残っている。
補正される前の正しい記憶が腰の痛みとともに呼び戻された。

毎日乗れと言われたらキツいけど、また思い出した頃に行きたくなるような、替えが効かない存在である。